メタボローム解析とは?
メタボローム(metabolome)とは、代謝物(metabolite)と、ギリシャ語の「全て」を意味するomeを合成した言葉で、直訳すると「代謝物の総体」を意味します。
そもそも代謝とは、生命の維持に欠かせない生体内で起こる化学反応のことを指します。たとえばお米を食べてブドウ糖に分解し、エネルギーを作り出す反応は代謝反応の一種です。また、代謝物とは、この化学反応の過程で生じる物質のことで、糖やアミノ酸、脂質、核酸、その他情報伝達物質など、様々な種類があります。すなわち、メタボローム解析とは「様々な種類で構成される代謝物すべてを解析すること」を意味します。
代謝物全体を解析することで、生体内でどのように代謝システムが変化しているのかを把握することが可能です。代謝変化を理解することは生命現象の理解そのものであり、たとえば、どのように健康が維持されているか、また、病気が起こる仕組みを分子レベルで知ることができます。
一方で、「代謝物すべてを解析」するメタボローム解析には、一つ一つの代謝物を網羅的に解析する、極めて高度な技術が必要となります。
NOSTERは、脂質メタボローム解析技術を用いたリポクオリティ(脂質の質)研究の第一人者である慶應義塾大学薬学部の有田誠教授と共同で、食事由来の腸内細菌脂質代謝物を網羅的に測定する独自の質量分析技術を開発・確立し、特異的に解析することを可能にしました。
NOSTERでは、腸内細菌が作り出す代謝物のメタボローム解析を提供します。
ヒトの消化管には1,000種、100兆を超える腸内細菌が存在しており、宿主であるヒトと代謝物のやり取りをしながら複雑かつ多種多様な微生物生態系を構築しています。NOSTERは、京都大学の小川順教授、岸野重信准教授らとの共同研究により、腸内細菌には宿主(ヒト)とは異なる脂質代謝経路が存在し、食事由来の脂質からヒトにはつくれない特異な脂質代謝物が産生されることを発見しました。これまでの研究から、これらの腸内細菌が作る脂質代謝物が、ヒトの健康にもかかわる多様な生理活性を有していることを見出しています。
また、新たな治療基盤の確立を目指して、独自の腸内細菌培養・合成技術により腸内細菌の脂質代謝を活用したオリジナルの脂質代謝物ライブラリーを構築してきました。
このNOSTERオリジナル脂質代謝物ライブラリーを応用し、腸内細菌の代謝物という未知なる領域における、独自のメタボローム解析を提供します。
NOSTERの腸内細菌脂質代謝物ライブラリー
応用領域
腸内細菌など微生物と脂質が関連する下記のような幅広い領域に応用していただくことが可能です。
食品分野
サプリメント開発や加工食品(菓子類・乳製品・調味料等)、生鮮食品(米穀・肉類・魚類等)の新しい機能探索
医療分野
病態メカニズムの解明/診断マーカーの探索・開発/治療効果評価
サービス概要
NOSTERでは、食事由来の油に含まれるリノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸を基質とする腸内細菌脂質代謝物に特化したメタボローム解析を提供します。
対象試料 |
糞便、血液、食品、培養液など |
主な代謝物質 |
飽和・不飽和脂肪酸(リノール酸由来代謝物、αリノレン酸由来代謝物、γリノレン酸由来代謝物) |
作業内容 |
前処理(代謝物抽出)+分離分析+データ処理・解析+報告書作成・納品 |
分析機器 |
液体クロマトグラフ質量分析計(LC‐MS) |
報告書 |
相対定量値、代謝パスウェイマップなど |
納 期 |
4〜8週間 |
価 格 |
1検体20万円(検体数に応じて、ご相談ください)。また、アカデミア向け価格も準備しております。お気軽にお問い合わせください。 |
オプションプラン
腸内菌叢解析 |
ご依頼検体が糞便の場合、次世代シークエンサーによる16sメタゲノム解析に加え、糞便重量あたりの菌数を個別に定量するハイブリッド菌叢解析も対応可能です。 |
NOSTERでは、次世代シーケンサーを活用した腸内菌叢のメタゲノム解析に、独自の培養技術を組み合わせたハイブリッド菌叢解析を採用しています。次世代シーケンサーによる各腸内細菌の占有率を解析する分子生物学的手法と独自に確立した嫌気性細菌(Akkermansia, Bacteroides, Bifidobacterium, Blautia, Clostridium etc.)の培養技術を融合させることにより、糞便重量あたりの菌数を個別に定量解析することが可能となりました。この定性的かつ定量的なハイブリッド菌叢解析は、既存のメタゲノム解析だけでは為し得なかったより詳細な腸内菌叢の把握を実現しています。詳しくは、こちらをご参照ください。
解析可能サンプルについて
生体サンプル
測定試料 |
ヒト、マウスの糞便、血漿、血清、母乳 |
必要サンプル量(目安) |
血液(血漿、血清):200μL以上
糞便:300mg以上 |
微生物
食 品
測定試料 |
加工食品、生鮮食品 |
必要サンプル量(目安) |
― |
上記以外でも対応可能な場合があります。詳細はお問い合わせください。
メタボローム解析サービス イメージ図
解析化合物リスト[腸内細菌脂質代謝物 ※1-4はそれぞれ、2つの化合物の合算値での分析となります。]
- LA Linoleic acid(cis-9-cis-12-octadecadienoic acid)
- HYA 10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid
- HYB 10-hydroxyoctadecanoic acid
- HYC 10-hydroxy-trans-11-octadecenoic acid
- KetoA 10-oxo-cis-12-octadecenoic acid
- KetoB 10-oxooctadecanoic acid
- KetoC 10-oxo-trans-11-octadecenoic acid
- 13(OH)LA 13-hydroxy-cis-9-octadecenoic acid
- 13(oxo)LA 13-oxo-cis-9-octadecenoic acid
- 10,13(diOH)LA 10,13-dihydroxyoctadecanoic acid
- CLA1 cis-9-trans-11-octadecadienoic acid ※1
- CLA2 trans-9-trans-11-octadecadienoic acid
- CLA3 trans-10-cis-12- octadecadienoic acid ※1
- OA Oleic Acid(cis-9-octadecenoic acid)
- ALA α-Linolenic acid(cis-9-cis-12-cis-15-octadecatrienoic acid)
- αHYA 10-hydroxy-cis-12-cis-15-octadecadienoic acid ※2
- αHYB 10-hydroxy-cis-15-octadecenoic acid
- αHYC 10-hydroxy-trans-11-cis-15-octadecadienoic acid ※2
- αKetoA 10-oxo-cis-12-cis-15-octadecadienoic acid ※3
- αKetoB 10-oxo-cis-15-octadecenoic acid
- αKetoC 10-oxo-trans-11-cis-15-octadecadienoic acid ※3
- 13(OH)ALA 13-hydroxy-cis-9-cis-15-octadecadienoic acid
- 13(oxo)ALA 13-oxo-cis-9-cis-15-octadecadienoic acid
- 10,13(diOH)ALA 10,13-dihydroxy-cis-15-octadecenoic acid
- GLA γ-Linolenic acid(cis-6-cis-9-cis-12-octadecatrienoic acid)
- γHYA 10-hydroxy-cis-6-cis-12-octadecadienoic acid ※4
- γHYB 10-hydroxy-cis-6-octadecenoic acid
- γHYC 10-hydroxy-cis-6-trans-11-octadecadienoic acid ※4
- γKetoA 10-oxo-cis-6-cis-12-octadecadienoic acid
- γKetoB 10-oxo-cis-6-octadecenoic acid
- γKetoC 10-oxo-cis-6-trans-11-octadecadienoic acid
- 13(OH)GLA 13-hydroxy-cis-6-cis-9-ctadecadienoic acid
- 13(oxo)GLA 13-oxo-cis-6-cis-9-octadecadienoic acid
- 10,13(diOH)GLA 10,13-dihydroxy-cis-6-octadecenoic acid
- RA Ricinoleic acid(12-hydroxy-cis-9-octadecenoic acid)
- KetoRA 12-oxo-cis-9-octadecenoic acid
- 12OH 12-hydroxyoctadecanoic acid
- 12oxo 12-oxooctadecanoic acid
- 今後も拡張を予定しています。
報告書例
仕様は予告なく変更する場合がございますので、ご了承ください。
ご依頼から報告までの流れ
お客様の研究目的に応じた解析方法をご相談させていただきます。まずは、お気軽にお問い合わせください。
1.打ち合わせ
測定に必要な各種情報のご提供(研究目的、試料形態・量など)
2.試料輸送
宅配便による輸送(冷蔵・冷凍便) 着荷日は営業日(月〜金)でお願いします。
(試料発送時には、担当者までご連絡ください)
3.保管
お預かりした試料は、試料に適した条件で保管します。(冷蔵、冷凍あるいは極低温冷凍庫)
4.前処理
メタボローム解析の経験が豊富なスタッフが試料に応じた最適な前処理をします。
5.測定
各種分析機器を最高のコンディションで、最適なメソッドを用いて測定します。
6.解析・ご報告
試験系に応じて、ピーク面積値比較、群間相対比較、定量値などをご報告します。
解析に関する注意事項
- 得られた解析結果は研究目的にのみ利用可能です。診断などの他の目的にはご利用できません。
- 個人情報に関しては、解析依頼元で匿名化をお願いします。
- 病原性ウィルスによる汚染サンプルなど、感染の恐れがあるサンプルの受け入れは行っておりません。
- 解析データは解析終了後1年間保存します。保存期間終了後は消去します。