Science

腸内細菌脂質代謝物「HYA®」

HYA®
(10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid)

現在のところ、糖尿病治療は血糖値をコントロールする薬剤が使われていますが、これは糖尿病そのものを治療する薬ではありません。世界の糖尿病人口は4億6,000万人以上に上り、成人の有病率は9.3%、11人に1人が糖尿病と推定されています。また、2型糖尿病は糖尿病全体の90%を占めており、日本でも予備軍を含め、2,000万人以上が発症リスクを抱えていると言われています。その背景として、不健康な食事や運動不足、肥満の増加によるインスリン抵抗性が要因として認められています。インスリン抵抗性は2型糖尿病を引き起こすだけでなく、高血圧や脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic steatohepatitis : NASH)、動脈硬化など様々な疾患の基盤病態となっており12)、NASHになると、肝硬変や肝がんになるリスクも高まります。
NOSTERは、腸内細菌が産生する代謝物(ポストバイオティクス)を創薬候補物質に糖尿病などの慢性疾患を根本から治療し、疾患が他の疾患につながるカスケードを防ぐための治療薬開発を進めています。
HYAは植物油脂の主要成分であるリノール酸が腸内細菌による代謝を受けて生成される機能性脂肪酸であり、NOSTERはアカデミアとの連携により機能解明と臨床応用を進めています。京都大学の小川順教授および岸野重信准教授らは、世界に先駆けて腸内細菌によるリノール酸の代謝経路を解明し、食事由来の脂質が腸内細菌によって代謝され、HYAなど複数のリノール酸代謝物が腸管に存在することを発見しました11)。さらに、京都大学の木村郁夫教授は、モデルマウスを用いた実験で、HYAが腸管に発現している脂質受容体GPCRを介してインスリン抵抗性を改善し、その結果、血糖値上昇を抑制するメカニズムを解明しました13)。NOSTERは、2型糖尿病、NASH、炎症性腸疾患をターゲットにHYAの創薬開発に取り組んでいます。

参考文献 (11) 参照

(引用文献)
11) Kishino, S. et al. Proc Natl Acad Sci USA 29, 17808-17813 (2013).
12) Machado, M.V. et al. PLoS One 7, e31738 (2012).
13) Miyamoto, J. et al. Nat Commun 10, 4007 (2019).

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