Science

腸内細菌が産生する機能性代謝物

腸内細菌は食事由来の成分から宿主が合成できないビタミン類などの重要な栄養素を合成したり、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生して腸内環境を整えたりすることで、宿主と共生関係を構築しています。これら菌が産生する有益な代謝物は「ポストバイオティクス®」と呼ばれ10)、宿主の生命恒常性に重要な様々な役割を果たしていることが判ってきました。その中でも、NOSTERでは脂質と炭水化物(糖質)の代謝物研究に注力しています。
脂質に関しては、これまでヒトでの代謝については多くの研究がなされており、リノール酸からプロスタグランジン、αリノレン酸からEPAやDHA等の生理活性物質が生成されることが知られていますが、腸内細菌による脂質代謝に関しては殆ど研究がされていませんでした。NOSTERは京都大学の小川順教授および岸野重信准教授らとの共同研究で、腸内細菌には宿主とは異なる脂質代謝経路が存在し、食事由来の脂質から特異な脂肪酸代謝物が産生され、多様な生理活性を有していることを見出しました11)。現在、腸内細菌の脂質代謝を活用して、これらをオリジナルの脂質代謝物ライブラリーとして構築しており、新たな治療基盤の確立を目指しています。
炭水化物(糖質)に関しては、菌が産生する多糖に代謝改善、腸管免疫系への作用などの活性が見出されています。NOSTERは腸内細菌が産生する難消化性の食物繊維である菌体外多糖の精製とその機能性を解明する研究を推進しています。

(引用文献)
10) Tsilingiri, K. et al. Beneficial Microbes 4, 101-107 (2012).
11) Kishino, S. et al. Proc Natl Acad Sci USA 29, 17808-17813 (2013).

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